東京高等裁判所 昭和31年(ネ)216号 判決 1958年2月20日
控訴人 石森胤正
被控訴人 国
訴訟代理人 家弓吉已 外三名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取り消す。控訴人と被控訴人との間に、昭和二十六年五月三十日に締結された、控訴人が期間の定なく米駐留軍池子火薬廠において爆薬取扱工として勤務することを内容とする雇傭契約が存在することを確認する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求あると申し立て、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、次の事項を付け加える外、全部原判決の記載と同一であるから、これを引用する。
控訴代理人は、次のように付加、訂正して述べた。
一、控訴人は、第一審において、先任順の取り方を「当該作業単位毎」に定めるように主張したが、右は誤りであつて、先任順は、整理を行うべき「当該施設」において職種毎に定められるべきものであるから、これを訂正する。すなわち「施設」とは「作業単位」よりも広く、大体独立の部隊程度のものを指すものであつて、先任順が作業単位についてではなく、施設について定められるべきものであることは、臨時指令第二項c項によつて、まことに明白である。同指令第二項aによると、整理人員数を作業単位毎に明示することに定められているが、これは先任順の取り方を定めたものではなく、人員が何人程整理さるべきかを作業単位毎に定めらるべきことを示すだけである。退職希望者が整理人員数に満たない場合は、施設を通じて先任順で解雇し、作業単位毎の整理人員数の過不足は、配置転換によつて補正するという方法をとるものであつて、池子火薬廠においても、本件整理以外は、右のような方法を以つて行われている。
二、仮りに従来の主張のように、先任順が「作業単位毎に」定めらるべきものであるとしても、作業単位とは、臨時指令に「作業単位」の例として、「事務所、工場、モータープール、その他」と記載していることによつても知られるように、ある程度それ自身で一定の作業を独立して遂行し得る能力を有する作業上の機構をいうものと解するのが当然である。これを本件の池子火薬廠についていえば、第一回整理の際にも、その被解雇者名簿には、モータープールに相当するものとして、控訴人の属するストレーヂが挙げられ、しかもその整理では、モータープール、ストレーヂを夫々作業単位として先任順位が決定されている。これによつても、本件整理の場合の作業単位は、ストレーヂ・デイヴイジョンであつて、被控訴人主張のような同デイヴイジョンの下にあるオペレーシヨンセクシヨン(作業課)に属するシツピング・アンド・リシービングブランチ(受入及び積出部)のフイールド・ユニツト(現場班)でないことは明らかである。
元来「作業単位」とは、人員整理の場合のみに使われることばで、臨時指令において、「作業単位を指定する」とは、「人員整理請求書の中で整理の対象を指定する」ことに外ならない。作業単位を前述のように例示した臨時指令を制定したのは、整理基準を示して労務者の不安を一掃するためであり、いわゆる先任権の制度は、人員整理が公正に行われるための制度である。それがためには、単位はなるべく広く、しかも安定していることが要請される。先任権制度は、アメリカにおいて発達した制度であるが、アメリカでは労働協約で先任権制度を採用する場合には、単位を協約中に明記し、かつ組合はなるべく広くするように努力している。臨時指令が先任権制度を採用したのも、整理を公正簡明にして紛争を防止するためであるから、臨時指令はなるべくこの制度の趣旨に従つて解釈しなければならない。軍は作戦上の必要によつて作業の機構を定めることができるが、それとこの「作業単位」とは直接関係がない。「作業単位」とは、人員整理の範囲を定める単位であつて、その広さは例示の如きものが適当とされ、これを「作業単位」と名付けたまでである。従つて作業単位を細分するなどということはあり得ない。軍が「作業単位」を「指定」するとは、整理関係施設(たとえば部隊)中に、右のような「作業単位」がいくつかあるときは、「整理対象」となるのはどの「作業単位」かを明らかにせよという意味であつて、作戦上の必要によつて作業機構を定めうるという当然のことをわざわざ書いたわけではない。従つて作戦機構の変更に伴つて、作業単位の変化することはあり得るが、前者の変更が当然後者の変化を意味するわけではない。結局作業単位とは、現にある機構の中で臨時指令の例示に相当する機構はどれかということを、見ればいいのであつて、このように解してはじめて、単位の安定の要求を満足させ、しかも作戦上の必要とも矛盾しない。従つて本件の場合、作戦上の機構として、ストレーヂを細分してフイールドユニツトを作つても、整理のための単位としての作業単位はストレーヂであることに変りはないと解すべきであつて、かく解することは、軍の作戦上の必要にとつて何の阻害ともならない。
二、爆薬取扱監督は、爆薬取扱工とは職種を別にするものではなく、爆薬取扱工中の役付にすぎず、職階制のある場合には職階に相当する。臨時指令第二項aのみをみると、「大工職人、大工見習、大工助手、配管工職人、配管工監督、機械工職人、機械工助手等」と記載し、あたかも監督が一つの職種であるかのようになつているが、右指令は、昭和二十八年一月の軍、政府、組合との三者会談にあたり、初め軍側から提出された案には、「人員の対象となる工場、事務所、モータープール等の使用部隊における対象人員の数を職種別、職階別に明示する」ものとし、「職種別、職階別」の例として、前記指令のような例が記載されていたが、右提案に対する組合側の修正意見を容れ、その後成立した臨時指令からは原案にあつた「職階別」という言葉は削られ、単に「職種別」に明示することとなつた。従つて例示も当然職種だけに訂正せられるべきところ、例示だけは原案のままの形で残されてしまつたのに外ならない。
当時の(現在も同じ)職種を定める規程は、駐留軍技能工系統労務者基本給基準表、いわゆるスケジユールAであつて、これには監督という職種はない。監督と一般工との差は、実質的には単に役付手当を支給されるというにつき、作業の内容は全く両者同一である。
これを結論するに、本件整理で職種として示された爆薬取扱工には爆薬取扱工監督をも含むものと解すべきである。
被控訴代理人は、右控訴人の主張に対して、次のように述べた。
一、先任順の定め方については、作業単位毎に職種別に定められるべきものであることは、控訴人の第一審以来主張し来り、当事者間に争のないところであつたが、控訴代理人は当審のなかばにいたり従来の主張を撤回し、先任順は整理を行うべき当該施設において職種毎に定められるべきものであると主張するに至つたが、被控訴人は控訴人の右先行自白の撤回に異議があるばかりでなく、右控訴人の主張は誤つたものである。
すなわち人員整理に関する臨時指令第二項aによれば、軍が労務管理事務所に対して発する人員整理請求書には、人員整理を行うべき施設内において、人理整理の対象となる「作業単位」と「職種」を明示することになつているが、軍が人員整理をする場合は、作戦上の必要から或る施設内において、どの作業単位を廃止し、または一部縮少するかを決定するわけであるから整理の対象となる当該作業単位について、職種別に先任順が定められるべきことは当然のことであり、作戦上の必要から整理の対象としていない他の作業単位から整理者が出ることは、軍の予定していないところである。これがためにこそ、人員整理要求書に整理の対象となる作業単位な明示することとなつているのであつて、若し先任順を施設について職種別に定めるのであれば、作業単位を明示する必要はなく、単に軍は施設と整理の対象となる職種だけを明示すれば足りるわけである。また先任順の定め方が作業単位毎に職種別になされるべきことは、人員整理の場合に、施設全体からではなく、整理の対象となる当該作業単位の当該職種のうちだけから、退職希望者を募ることとなつている臨時指令第二項dの規定に徴しても明らかである。そして臨時指令の成立後、今日まで陸海空三軍の各施設における人員整理は、作業単位こそ各軍一律ではないが、先任順の定め方は、作業単位毎に各職種別になされ、これに基いて整理が行われて来たのであつて、この点については、軍も組合側も異議なくこれを認め、何ら紛議を生じたことはなかつた。
二、臨時指令にいう作業単位は、軍において、地域、予算及び機能の諸点から、軍としての使命を効果的に達成するために、独自の立場から適当に決定されているものであり、陸海空三軍によつて、それぞれ組織が違い、又同一の軍であつても組織機構を異にするので、各施設が一律でなく、又作戦上の必要から作業単位が変更される場合もあり得る。しかして作業単位は、単に人員整理のためだけのものではなく、軍が作戦上作業能率を最も有効に上げるために作られるもので、人員整理においては、この単位を利用するに過ぎないのである。
本件人員整理の場合においては、軍は既に昭和二十九年三月一日以前からできていた機構に基き、整理の対象となる作業単位を、「フイールド・ユニツト」と指定して整理要求をして来たのであるから、労務管理事務所が「フイールド・ユニット」における爆薬取扱工について、先任順を定めるのは当然のことであつて、その結果控訴人が被解雇者の一人に入つたからといつて、何ら臨時指令に違反したものではなく、又、軍は殊更に控訴人を解雇せんがために、害意を以て、本件作業単位を定めたわけのものでもない。
三、爆薬取扱監督と爆薬取扱工とは、臨時指令において明らかに職種を異にするものである。監督は一般工に比べれば、特定の技能と知識経験を有し、特別の手当を支給されているのであつて、代替性がなく、誰でも監督になれるわけではない。従つて人員整理の場合に、例えば軍の作戦上の必要から、特定の技能者を残し一般工は多すぎるので整理し度いというときに、監督と一般工とを同列にして整理するとすれば、この目的が達せられない結果を生ずることもあつて、軍施設の作業遂行上困るので、人員整理の場合においては、特に職種を細分化する必要があるわけである。
軍、政府、組合の三者会談において、当初の案に存在した「職階別」という字句が削除されたことは争わないが、人員整理の場合には、臨時指令第二項aに記載されてあるとおり、その必要性から、特に職種を細分化することについて、三者間の合意が成立したのである。従つて給与規程における「スケジユールA」の職種と人員整理のための臨時指令の職種とは同一ではなく、人員整理の場合の職種は、各施設において通常一般に使用せられている名称を採用したものに過ぎない。
当事者双方の提出援用した証拠及びこれに対する陳述<省略>
理由
控訴人の主張する請求原因事実のうち、(一)いわゆる先任順の取り方が、「当該施設における職種別」であるか、或いは「当該作業単位毎における職種別」であるかの点、(二)仮りに作業単位であるとして、ここにいわゆる「作業単位」が、池子火薬廠における「ストレーヂブランチ」(貯蔵部)全体をいうか、或いは同部内の「オペレーシヨンセクシヨン」(作業課)に属する「シツピング・アンド・リシービングブランチ」(受入及び積出部)の下位単位「フイールドユニツト」(現場班)のみに限られるか、(三)更に最下位単位「フイルドユニツト」に限られないとした場合、爆薬取扱監督と爆薬取扱工とが、臨時指令にいう同一職種に属するかどうかの三点を除いては、いずれも当事者間に争いのないところである。
よつて以下各争点について、順次判断する。
一、いわゆる先任順が、「当該作業単位の当該職種毎に」定められるべきことは、控訴代理人の第一審以来主張し、被控訴代理人においてもこれを認め、当事者間に争いのなかつた事実である。控訴代理人は、当審のなかばにいたり、にわかに右の主張を撤回し、先任順は、「当該施設における職種毎に」よつて定められる旨主張するにいたり、右は当審における証人野村仁裕の証言(第一、二回)及びその成立に争いのない乙第二号証中「人員整理ノ手続ニ関スル臨時指令」第二項の記載に基くものであることは、弁論の全趣旨に徴し明白であるが、右野村仁裕の証言は、次の事実に照らし、当裁判所の到底採用し得ないところである。すなわち右臨時指令第二項には、「各請求書ハ、人員整理ノ理由ヲ明示シ、更ニ各施設内ニオイテ人員整理ノ対象トナル事務所、工場、モータープール、其ノ他ノ作業単位毎ニオケル整理人員ノ数ヲ、職種別ニ明示スルモノトスル。」とし、同 には、「労管ハ、人員整理請求書ニ該当スル作業単位ノ該当職種ニ人員整理ニヨル退職ヲ希望スル者ガアルトキハ、ソノ退職希望ヲ受付ケル。」とあり、更に同 に「該当作業単位ノ該当職種ニオイテ退職希望数マタハ自発的退職者数ガ整理人員数ニ充タナイトキハ、労管ガ、各職種毎ニ、人員整理請求書ニ示サレタ数ノ労務者ヲ解雇ノ対象ニ選抜スル。解雇ノ対象ノ選抜ハ、先任順ノ逆順ニヨル。」と規定されており、右の記載をその成立に争いのない甲第八号証の一、二、三、第九号証、当審証人坂本実の証言並びにその成立に争いのない乙第九号証の一、二、乙第十号証に総合して考察すれば、前記規定の趣旨は、いわゆる先任順を、駐留軍が人員整理の対象として要求した作業単位における当該職種別によるべきものであることを定めたものであると解するを相当とする。尤も同指令第二項には、「労管ハ人員整理ノ対象トナツタ職種毎ニ、当該施設内ニオイテソノ職種ニ雇用サレテイル者全員ノ名簿ヲ作製スル。ソノ名簿ハ各個人ガ施設、職種ノ如何ヲ問ハズ、在日米軍ニ勤務シタ期間ヲ退職手当受給資格決定ノ際ト同様ノ方法デ計算シ、各職種毎ニ労務者ヲ右ノ計算ニヨル先任ノ順位ニ記載スルモノトスル。」と記載されているが、右は前記甲第九号証の記載によつても明認されるように、右指令案の作成にあたり論議の主要課題の一つとなつた、先任順を決定する基礎となる期間の計算方法について規定したものであつて、たまたまこの名簿が当該施設内において、その職種に雇用されている者全員について作製されたとしても、このことの一事を以ては、未だ前述の認定を左右するものとは解されない。
以上これを要するに、先任順の定め方が「当該作業単位の当該職種毎」によるとの、控訴人の第一審以来の主張が、真実に反するとの事実はこれを認めるに足りる証拠がないばかりでなく、却つて右主張こそ、真実に合致するものと認められるものであるから、控訴人が、今これをひるがえして、「当該施設における職種毎」によるとする主張は到底採用し難いものといわなければならない。
二、次に臨時指令に規定された「作業単位」を、本件池子火薬廠について、被控訴人の主張するように、「ストレーヂブランチ」(火薬貯蔵部)内の細分単位「フイールドユニツト」(現場班)
に限定することが、右指令に違反するものまたは解雇権の濫用であるかの点については、当裁判所は、次の事項を附け加える外、原判決の記載と同一の理由によつて、そのいずれにも該当しないものと判断するものであるから、右の記載を引用する。
控訴代理人は、「作業単位」とは、人員整理の場合のみに使われることばであつて、臨時指令において、「作業単位を指定する」とは、「人員整理請求書の中で整理の対象を指定すること」に外ならないと主張し、第一審における証人坂本実の証人調書には、「作業単位は、わたくしの記憶では、人員整理の場合のみに使われます。」との記載があるが、当審における同証人の証言によれば、右の記載は、必ずしも作業単位のことばが、人員整理の対象を指定するためにのみ使用されることを意味するものでないことを認めることができ、その成立に争いのない乙第三、四号証、乙第五号証の一、二、によれば作業単位は広く軍の施設内において、軍の機能と使命とを、最も効果的に達成するため、軍の司令官がその有する独自の権限と職責とに基いて、要員を配置展開するために作成された機構図における一単位を指し、決して人員整理の場合にのみ使われることばではなく、軍の司令官は、その時々における作戦上の必要から、独自の権限によつて、これを増減することができるのは、いうをまたないところであるが、前記臨時指令の規定も、この要請のもとにおいて、いかに軍全体の能率を害することなく、しかもでき得る限り人員の整理が公正に行われることを期したものであつて、すなわち、臨時指令にいう作業単位も、ひつきよう軍の機構図における作業単位を指すものに外ならないものと解するを相当とする。してみれば、その成立に争いのない乙第一号証により、対象となる作業単位(フアンクシヨナルユニツト)を「積出及び受入部、現場班」(シツピング・アンド・リシービング・フイルドユニツト)、職種(ジヨツブクラシフイケイシヨン)を「爆薬取扱工」(エキスプローシブハンドラー)、整理人員を十八名と明示して、司令官から人員の整理を要求された被控訴人が、該整理の対象を、司令官の定めた機構図における作業単位「フイルドユニツト」(現場班)に属する爆薬取扱工としたことは、むしろ当然と解さなければならない。
なお当審における証人野村仁裕(第一、二回)浜野春保の各証言中、以上認定に反する供述は、当裁判所のにわかに措信し得ないところである。
三、すでに本件人員整理における作業単位が、池子火薬廠のストレーヂ・デイヴイジヨンにおける最下位単位である「フイールドユニツト」であることは、前段に認定したところであるから爆薬取扱監督と爆薬取扱工とが、臨時指令における同一職種であるかどうかは多く論ずる要はないが、臨時指令第二項には「各請求書ハ、人員整理ノ理由ヲ明示シ、更ニ各施設内ニオイテ人員整理ノ対象トナル事務所、工場、モータープール、其ノ他ノ作業単位毎ニオケル整理人員ノ数ヲ、職種別ニ明示スルモノトスル。例エバ人員整理請求書ニハ、(中略)整理人員ヲ、大工職人、大工見習、大工助手、配管工職人、配管工監督、機械工職人、機械工助手等夫々何名ト定メル。」と規定しており右の記載と原審及び当審証人坂本実、当審証人川田正信の各証言とを総合して考察すれば、右臨時指令においては、その目的とする人員の整理後における作業継続の必要上、特殊の熟練を必要としない一般職工と特定の技能と知識経験とを有する同職工監督とを、同指令にいう職種を異にするものとして規定したものであると解するを相当とする。
控訴人は、右指令における例示は、当初指令案に規定された「職階別」の例として記載されたものであるから、その後「職階別」の言葉が削除されたのに伴い、当然訂正せられるべきであつたと主張し、指令案に当初規定された職階別の言葉がその後修正削除された経緯が、控訴人の主張のとおりであることは被控訴人の争わないところであるが、それがため、前示例示が、当然訂正削除せられるべきであつた旨の原審証人市川誠、小川寿雄、当審証人野村仁祐(第一回)、浜野春保の各証言は、当裁判所のにわかに採用し難いところであり、更に右証人小川寿雄の証言及びその成立に争いのない甲第五、六号証によれば、俗にスケジユールAと呼ばれ、駐留軍労務者の職種を定めた連合国軍関係技能工系統使用人給与規程においては、「爆薬物ノ信管取リ外シ、火薬性能試験等ノ爆薬物取扱作業ニ従事スル者」は、「爆薬取扱夫」の職種に定められ、これら作業班を指揮監督するフオーアマンも、単に役付手当を支給せられるに止まり、別個の職種として規定されているものであることはこれを認めるに足りる証拠はないが、右の事実は本件の「人員整理の手続に関する臨時指令」が前述のように、その独自の目的に従い、一般職工と同職工監督とを別異の職種に属するものと規定することを妨げるものとは解されず、前記証人小川寿雄、野村仁祐、浜野春保の各証言中、右認定に反する部分は、当裁判所のたやすく措信しがたいところである。
してみれば、本件解雇にあたり解雇予告通知を受けなかつた訴外久我茂、加藤雄二、藤本静男、三輪保の四名が、爆薬取扱監督であつたことについて当事者間に争いのない本件においては、控訴人の請求は、この点からもまた理由がないものといわなければならない。
以上の理由により、控訴人の本訴請求を理由なしとして棄却し、控訴費用の負担について、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のように判決した。
(裁判官 内田護文 原増司 高井常太郎)